ぐるめも

数学メモ帳。抽象を具体に

数学夏祭り 問2 解説

本ブログ (ぐるます) にて、2020年9月2日に投稿した記事を移行したものです。

こちらの問題

 \triangle{ABC} \displaystyle{ \angle B = \frac{\pi}{4},\ \angle C = \frac{\pi}{8},\ BC = \sqrt 6} である。
 \triangle{ABC} の垂心を  H 、外心を  O 、重心を  G とし、外心に対して垂心と対象な点を  L 、線分  GL m : n に外分する点を  D とする。 (ただし、  m,\ n 0 < n < m をみたす実数とする。)
四角形  ABDC の面積  S を、  m,\ n を用いた式で表せ。

の解説記事です。


簡易的な手書きの解説を記事1番下に載せてあります。



まず  \triangle{ABC} はこのような三角形になりますね。

問題文で与えられた各点の位置を図示してみましょう。


垂心  H はこのようになります。

 H から辺  BC,\ AB,\ CA (またはその延長) に下ろした垂線の足を、それぞれ  P,\ Q,\ R としておきます。

ここで、  \angle B,\ \angle C の角度がわかっていることと、直角の箇所がいくつも見つかることから、さまざまな場所の角度を求めてみると、下図の同じ色の角度がすべて等しくなることがわかります。

ピンク色の角は  \angle B に等しいので  \displaystyle{ \frac{\pi}{4}} 、青色の角は  \angle C に等しいので  \displaystyle{ \frac{\pi}{8}} ですね。

よって、  \triangle{APB},\ \triangle{HPC},\ \triangle{BQC},\ \triangle{HAQ} はすべて直角二等辺三角形です。そのため、直角を挟む  2 辺の長さは等しくなります。

また、  \triangle{ABH} AB = AH二等辺三角形であることもわかります。


ここで、辺  BC の中点を点  M とします。
外心  O は下図のようになります。

 BC,\ AB の垂直二等分線を黄色の破線で示しています。  O はこの  2 直線の交点ですね。


次に重心  G はこのようになります。

線分  AM 2:1 に内分する点です。


そして、点  L,\ D はこうなります。

 OH = OL,\ GD:DL = m:n ですね。


ようやく四角形  ABDC が見えました。この面積を求めるのですね。


さて、この四角形の面積を求めるには、まず何を求める必要があるでしょうか?
 BC の長さがわかっていますから、 \triangle{ABC} \triangle{BCD} の面積の和として求めるのがよさそうです。

ということは、点  D から辺  BC に下ろした垂線 ( DE とします) の長さと、線分  AP の長さがわかればよいですね。

まずは  AP の長さを求めます。
 AP = x とおくと、 BP,\ AB,\ AH,\ PC は次のように表すことができます。

ここで  PH = PC ですから、

 \sqrt{2}x + x = \sqrt 6 - x

これを解いて

 x = \sqrt 6 - \sqrt 3

ゆえに    AP = \sqrt 6 - \sqrt 3


では次に  DE の長さです。
 AP は周りに二等辺三角形がたくさんあったため、幾何的に求めることができたのですが、  DE はどうでしょうか。

 \triangle{BCD} や半直線  HL 周辺の角度や線分の長さがほとんどわからず、厳しそうですね。

今わかっている情報は

  •  O は線分  HL の中点であること
  •  D GL m:n に外分する点であること

なのですが、これらの条件を幾何的に利用するのは難しい気がします。

ではどうすれば利用しやすいでしょうか?


座標を使うのです。
座標を使えば、中点や外分点を簡単に求めることができるからです。
先ほどの図を  xy 平面上に配置してみましょう。

計算しやすければどう配置してもよいのですが、ここでは直交する  2 線分、 BC HP がそれぞれ  x 軸、 y 軸と重なるように配置してみます。
すなわち、 P が原点です。 O は外心なので、 xy 平面の原点は  O' としています。

こうすると、今求めようとしている  DE の長さは、 D y 座標の絶対値として求められそうですよね。
すなわち、まずは  D の座標を求めるのが目標です。


それでは各点の座標を求めていきます。
 A,\ B,\ C,\ H については、 AP を求めたときの図より

 A(0,\ \sqrt 6 - \sqrt 3),\ B(\sqrt 3 - \sqrt 6 ,\ 0),
 C(\sqrt 3,\ 0),\ H(0,\ \sqrt 3)


 M BC の中点なので

 \displaystyle{ \frac{(\sqrt 3 - \sqrt 6,\ 0)+(\sqrt 3 ,\ 0)}{2} = \left(\frac{2\sqrt 6 - \sqrt 3}{2},\ 0\right)}


 G AM 2:1 に内分するので

 \displaystyle{ \frac{(0,\ \sqrt 6 - \sqrt 3)+2\left(\frac{2\sqrt 6 - \sqrt 3}{2},\ 0\right)}{3} = \left(\frac{2\sqrt 6 - \sqrt 3}{3},\ \frac{\sqrt 6 - \sqrt 3}{3}\right)}


 O 2 本の黄色の破線の交点であることから、 x 座標が  M と同じで、なおかつ直線  y = -x 上にある点となるので

 \displaystyle{\left(\frac{2\sqrt 6 - \sqrt 3}{2},\ -\frac{2\sqrt 6 - \sqrt 3}{2}\right)}


 L HL の中点が  O であることから、 L(L_x,\ L_y) とおくと

 \displaystyle{\frac{(0,\ \sqrt 3)+(L_x,\ L_y)}{2} = \left(\frac{2\sqrt 6 - \sqrt 3}{2},\ -\frac{2\sqrt 6 - \sqrt 3}{2}\right)}

これを解いて

 L(2\sqrt 3 - \sqrt 6,\ \sqrt 6 - 3\sqrt 3)


さて、これで無事に  G L が求まったので、 D の座標を  m n で表すことができます。

 \displaystyle{\frac{-n \left(\frac{2\sqrt 3 - \sqrt 6}{3},\ \frac{\sqrt 6 - \sqrt 3}{3} \right) + m (2\sqrt 3 - \sqrt 6,\ \sqrt 6 - 3\sqrt 3)}{m-n}=\left(\frac{(6\sqrt 3 - 3\sqrt 6)m + (-2\sqrt 3 + \sqrt 6)}{3(m-n)},\ \frac{(-9\sqrt 3 + 3\sqrt 6)m + (\sqrt 3 - \sqrt 6)n}{3(m-n)}\right)}

図から  D y 座標は負であるので、 DE の長さは、 y 座標の符号を反転させて (絶対値をとって)

 \displaystyle{ \frac{(9\sqrt 3 - 3\sqrt 6)m + (-\sqrt 3 + \sqrt 6)n}{3(m-n)}}

であるとわかりました。


これで四角形  ABDC の面積を求めることができます。
 \begin{align}
S &= \frac{1}{2} \cdot BC \cdot (AP + DE) \\
&= \frac{\sqrt 6}{2} \cdot \left\{\sqrt 6 - \sqrt 3 +  \frac{(9\sqrt 3 - 3\sqrt 6)m + (-\sqrt 3 + \sqrt 6)n}{3(m-n)}\right\} \\
&= \frac{\sqrt 6}{2} \cdot \frac{6 \sqrt 3 m -2\sqrt 6 n + 2\sqrt 3 n}{3(m-n)} \\
&= \frac{3\sqrt 2 m + (\sqrt 2 - 2)n}{m-n}
\end{align}




【簡易解説】